夫・妻の存在を「空気」に例えて表現する人がいるが、大抵「奥さんと仲良いですか?」とか、「旦那さんと最近どう?」などといった、夫婦仲について質問をされた時に「空気みたいなものだよ」と、照れ隠しとも無関心とも取れる答えをする。
「空気みたいなものだよ」という言葉には
①「空気がなければ生きていけない」、つまり自分の伴侶の大切さを比喩した甘い言葉の意味と
②「空気のようにその存在に気付かない」という、揶揄とも取れる酸っぱい言葉の意味がある。
余計なお世話とも思ったが、周りの熟年夫婦にそのことについて聞いてみた。
夫・妻の存在は空気と同じで「居なくなったら生きていけない存在なのか」はたまた「居なくなっても何も感じない存在なのか」を。
そこから熟年夫婦の【心の本音】も見えてきた。
「空気みたいなものだよ」は照れ隠し?無関心?
この答えは簡単だ。端から見ていて仲の良い夫婦は照れ隠しであるし、どう見ても冷めきった夫婦の答えは無関心だ。
ところが実際は違った。
仲の良い夫婦でも、冷めきった夫婦でも居なくなって困ることに関しては「空気がなければ生きていけない」のと同じく相手を必要とし、居なくても困らないことに関しては、「空気のようにその存在に気付かない」のと同じく、全くの無関心だった。
夫婦の仲が良かろうが悪かろうが「空気みたいなものだよ」という言葉の裏には、自分の都合によって使い分ける2つの意味を含んでいたのだ。
つまり、この言葉を使う意味は、使う人が相手に対して常にどう思っているかではなく、聞かれたときに何を思い浮かべるかによって「照れ隠し」であったり「無関心」であったりするのだ。
人生の伴侶が居なくなると困ること
「夫が居なくなると困ること」のうち、最も多かった回答は【お金】だった。何とも寂しい答えだが、次に多かった回答が【精神的な支え】だったのが唯一の救いだろう。
「妻が居なくなると困ること」のうち、最も多かった回答は【家事】だった。女性からしてみれば「私は家政婦じゃないのよ」と、叱られてしまいそうだが想定の範囲内だ。次いで多かったのが【老後の面倒】だった。コチラも「私はヘルパーじゃないのよ」と言われそうだ。
どちらにしても「居なくなると困ること」を想像して答える「空気みたいなものだよ」の言葉には、相手の存在をどう思っているかの本音が見え隠れするのだ。
人生の伴侶が居なくても困らないこと
「夫が居なくても困らないこと」のうち、最も多かった回答は【家事】だった。次に多かった回答が【老後の面倒】だ。この回答はさすが女性ならではというところだろう。生活力に関していえば、夫に対して期待することなど何も無いということだ。
「妻が居なくても困らないこと」のうち、最も多かった回答は【お金】だった。次に多かった回答が【精神的な支え】だ。一見相反する答えのようにも思えたが、自分自身で賄えることに関しては、男性は困らないということだろうか。
こちらも「居なくても困まらないこと」を想像して答える「空気みたいなものだよ」の言葉には、相手の存在をどう思っているかの本音が見え隠れするのだ。
空気に例える本音と建前
何事にも本音と建前がある。
「夫・妻が死んで困ることは?」という問いに対して、【お金】と言葉では答える人もいれば、【精神的な支え】と答える人もいるだろう。
実際には【お金】と答えた人が、妻が亡くなったら精神的な支えを無くして引き篭もったり、【精神的な支え】と答えた人が、家族や親戚と遺産相続で血眼になって争ったりすることもある。
「空気みたいなものだよ」
この言葉の本音と建前は、もしかしたら言っている本人にも分からないのかも知れない。ただ、その時の思い描いた事柄、相手への感情、夫婦関係の良し悪しなど、様々な要因を思い浮かべて出た言葉が、この言葉なのかも知れない。
あとがき
今回この記事を書くにあたって、快くご協力して頂いた熟年夫婦の方に感謝を表すると共に、長年夫婦関係を継続されていることに敬意を評したい。
併せて「夫・妻なんて空気と同じだよ」と言ったことがある読者の方にも聞いてみたい。
「あなたの夫婦関係はどうですか?」という問いになんて答えるかを。