"誰が見ても別れた方が良い"
"本当は自分も別れたい"
なのに別れられない。そんな経験をしたことはないだろうか?
一般的にそれを「愛」とか「情」と呼ぶこともあるが、実は互いに依存しているだけの【共依存】かも知れない。
共依存とは
お互い過度に、相手に依存してしまう人間関係を指す。恋愛中のカップルは勿論、夫婦や親子関係に於いても共依存は成立する。
共依存になり易い人の特徴は、自分を顧みずに相手のために行動したり相手に尽くし過ぎたりする傾向がある人だ。
相手に「ああしろ、こうしろ」と自分の要求を押し付けたり、酷くなると「自分以外の人と誰とも合わせない」なんて愚行に及ぶこともある。
他人の目には、要求を「相手に押し付けている人」だけが依存しているようにも映るが、実は「押し付けられて言う事を聞いてしまう相手」も、その人に依存しているのだ。
つまり、互いが互いに依存している関係を共依存と呼ぶ。
共依存の原因
一般的に共依存関係を築いてしまう原因は、幼少期にあると言われている。
幼い頃、親から(特に母親から)無条件の愛情を注がれなかった場合に多く見られる。子供の頃に、あるがままの自分を受け入れてもらえなかった経験をすると、大人になって他人を通してしか自分の存在を見出せなくなるのだ。
つまり、依存する相手と付き合う・依存してくれる相手と付き合うことでしか、自分の存在価値を確かめられない人間になってしまうのだ。
よく「子供の接し方が分からない」という親御さんがいるが、接し方なんて小難しく考えずにいつもハグしてあげるだけで、子供は安心して自分の存在価値を認識していくのだ。
共依存の恐ろしさ
共依存の恐さは、相手が「自分のことを好きじゃなくなる」、若しくは「自分の目の前から居なくなるかも」という不安から、突拍子もない行動に出ることだ。
共依存関係にある2人は、依存している相手が自分の側から離れないように、2人の関係を邪魔する相手を排除したり、気に入らない相手の行動を制限させたりする。
エスカレートすると、相手を部屋に閉じ込めたり、最悪自分の死や相手の死を考えるようになるのだ。
共依存関係になると、相手の存在がこの世の全てとなり、相手がどう思うとか、周りからどう思われるか、といった常識的な考えは持てず、暴挙ともいえる行動を自覚のないまま取るようになる。
このような理由から、共依存は大変危険だと言われている。
共依存セルフチェック
共依存は誰の身にも起こり得る。
彼女や彼氏を友達より優先したり、付き合っている相手に嫉妬したりする経験は誰もがあるだろう。しかし、こういった行動や感情がエスカレートしてきたら、共依存を疑った方が良い。
チェック①「仕事や友達との約束よりパートナーが最優先」
社会生活を営む上で、必ずしもパートナーを最優先することができるわけではない。
仕事や友人が優先されることもあれば、ひとりの時間を優先すべき時もある。本来ならお互いがそれを認めて、折り合いを付けながら暮らすのが健全な人間関係だ。
しかし共依存関係になると、どんな時でもパートナーが最優先。重要な会議があっても、友人との大切な約束があってもパートナーを優先してしまう。
そうなっているようなら共依存を疑うべきだろう。
チェック②「自分の都合や気分でパートナーを振り回すor振り回される」
分かりやすく例えるなら、小悪魔的な女性とそれに振り回されるモテない男の関係だ。
振り回される側が疲れるのは当然だが、振り回している側も「相手に申し訳ない」とか「こんなことしたら嫌われるかも」と、自己嫌悪に陥りながら振り回しているのだ。
分かっていても、振り回したり振り回されたりすることが止められない。そうなったら共依存を疑うべきだろう。
チェック③「パートナーとの関係悪化で自暴自棄になる」
常に、毎日ハッピーなんてカップルは存在しない。
たまには喧嘩したり、お互い口を聞かないなんてことは誰しも経験があるだろう。
ところが共依存関係になると、2人の関係が崩れることで日常生活がままならなくなるのだ。暴飲暴食を繰り返したり、家出をする位なら可愛いものだが、酷くなるとクスリやお酒に溺れたり、他の異性に身を任せたりと、取り返しのつかない行動に出るようになる。
パートナーとの関係が上手くいかなくなった時、仕事を休んだり、何も手が付かなくなった経験がある人は注意が必要だ。自分で感情をコントロールすることが出来ず、思ってもいない行動に出てしまうようになったら共依存を疑うべきだろう。
チェック④「2人の世界に入り込んで周りが見えなくなる」
共依存関係になると周りが見えなくなる。他人を傷つけたり悲しませることに気が付かないのだ。
親や友人が自分を心配して、交際を反対しても意に介さなかったり、それどころか反対してきた親や友人に対して敵意を剥き出しにして、関係を断ち切ったりすることを平気でするようになる。
共依存の最大の問題は、正しい判断が出来なくなることに加えて、周りの意見を遮断してしまうことだ。
人からの助言や忠告にイライラし始めたら共依存を疑うべきだろう。
共依存から脱するには
共依存関係になると、ひとりで過ごすことやパートナーが居ない状況に不安を覚えるようなる。
まずは、自分ひとりでも楽しめる心構えと環境を整える必要があるだろう。パートナーと一緒でなくても大丈夫な自分になれることがゴールだ。
ステップ①「共依存を認める」
共依存を克服するための第一歩は、「共依存である自分」を認めることだ。
自分でも気付かないうちに、共依存関係となっていることが多いため、本人からしてみれば自分とパートナーの関係は正常と思っている。このことが共依存関係が表面化し難い最大の理由であるが、上記のセルフチェックの結果を分析したり、家族や友人からの忠告で共依存が疑われるなら、それを認めることから始めよう。
ステップ②「ひとり時間を持て余さない」
共依存になると、パートナーと過ごす時間が人生の全てと思い込んでしまい、他者との過ごす時間や自分だけの時間を過ごすことが下手になる。
他者との関わり合いが苦手になると、尚更パートナーに依存する。これが共依存から抜け出せなくなる負のスパイラルだ。
このスパイラルを断ち切るためには、少しずつでもひとり時間を楽しめる自分になることが重要だ。
たまには友人と遊んだり、ひとりで温泉に行ったりしてパートナー以外と過ごす時間を増やしていくことが共依存関係からの脱却のステップだ。
初めは戸惑うかも知れないが、長いスパンをかけて「焦らずに今までの自分を変える」くらいの気持ちで臨むのが良いだろう。
ステップ③「マイルールを決める」
共依存が問題となるのは「行き過ぎた」または「過度の」行動が原因だ。
例えば、相手の行動が気になって一日中電話やLINEをしてみたり、会いたい気持ちが抑えられずに仕事終わりを待ち伏せしたりと、常人では考えられないような行動でも、愛情表現と勘違いして出てしまうことだ。
問題となるこれらの行動を抑えるには、自分を律することが出来る人ならマイルールを・出来ない人ならパートナーと一緒にルールを決めると良い。
電話は寝る前の一回だけとか、LINEは休み時間のときだけなど、ルールを決めて自分をコントロールする方法を見つけることが大切だ。
ステップ④「環境を劇的に変える」
共依存関係を本気で脱したいなら環境を変えると効果が高い。それも劇的に変化させることが重要だ。
一緒に暮らしているのなら別居するとか、最悪離婚することも共依存関係を断ち切る為には効果的な対処法だ。
依存する・依存される相手が居なければ、そもそも共依存関係は成り立たない。付き合った相手が悪かったと思って、一緒に生きていくのを諦めることも選ぶべき選択肢だ。
まとめ
これまでに挙げた共依存関係の症状を見て「自分もそうかも」と思った人もいるかも知れないが、「愛情からくる行動」と「共依存からくる行動」の境は曖昧だ。
パートナーが心配で仕事に迎えに行っても、相手が束縛と捉えてしまえば行き過ぎた行動だろうし、愛した人と別れて自暴自棄になっても、自分を傷つけるような結末にならなければ、愛していたからこその行動だ。
どこまでが愛情が為せる行動なのか、共依存関係なのかはつまるところ当人同士にしか分からないのかも知れない。
共依存関係は確かに危険な一面も包含しているが、傍からアレコレ推測されて「あなた達お互いに頼り過ぎじゃないの?」とか「相手に依存し過ぎてない?」なんて言われる筋合いはないだろうし、余計なお世話じゃないかと思う。
とはいえ、共依存関係になった恋愛や結婚は、当人達はもちろん、周りの家族や友人たちも不幸にするかも知れないことを忘れてはいけない。